「自然のあるべき体の姿」=「整体」を得るために


人体力学とは


「人体力学」は、井本整体の主宰者である井本邦昭師が長年にわたり提唱してきた、整体理論の大きな柱の一つです。

近年、「人体力学」(高橋書店刊)により、広く世間に知られるようになりました。



一般に「力学」というと、たとえば「テコの原理」のように、力点に力が加わると、支点を介して作用点にどのような力がかかり、その力は支点の位置によってどのように変化するか、というような法則を表します。


同じように「人体力学」とは、身体(からだ)の構造から導き出される「こうなれば、こうなる」という力学的な「法則」をまとめたものです。


たとえば、

(1)呼吸器の疲労から菱形筋が弛緩

⇒(2)肩甲骨が開いて下垂する。

⇒(3)肋骨が圧迫を受けてさらに呼吸器に負担

⇒(4)同時に、胸椎12番の硬直や骨盤の下垂に連動

⇒(5)結果として生殖器、消化器、あるいは泌尿器などの症状が出易い

というような一定の法則があるわけです。



人間の身体はそれぞれの個性はあるにしても、基本構造は共通していますので、この「人体力学」の法則にしたがって、身体を読み解いていくと、さまざまな症状の原因にたどり着くことができるのです。

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■身体の構造と人体力学

身体は、骨と骨が関節でつながり、関節同士がさまざまな筋肉でつなぎ合わされています。そして、その筋肉が協力しながら引っ張ったり、ゆるんだりすることで、体の動きを作っているのです。

私たちが歩いたり、走ったりする動きも、そういった様々な骨格筋の精妙な協力関係によって成り立っています。最新のロボットであっても、人間のなめらかな動きと比べると、まだ相当にぎこちない感じがするのは、その動きの複雑さ、難しさを表しています。

さらに身体のすばらしさは、「ある箇所がうまく動かなくなると、ほかの箇所でそれをカバーして動くことができる」ということなのですが、一方で、これが一ヶ所の不具合がさまざまな箇所に波及する原因でもあるのです。人体力学は、その波及の法則であり、波及した問題を本来の問題に収束させるための法則でもあります。



■身体の動きと人体力学

身体がうまく動かない、動くと痛むなどの症状は、人体力学的な筋肉の働きが阻害されていることから起きています。

たとえば肩の痛みやコリという問題を見てみます。

肩の関節を作り、人体力学的に連動する鎖骨、肩甲骨、僧帽筋などの筋肉群、そしてそこからさらに連動する脳、呼吸器、上肢(腕、肘、手首、指)、消化器などの働きと診ていくと、肩のコリといってもさまざまな原因があり、それを見つけるには人体力学的な視点が欠かせません。

硬直や痛みなどの症状はもちろんですが、スポーツ選手の不調の原因なども、「その人の本来の動きを妨げているものは何か」という視点から、人体力学で読み解くことができます。



■身体の機能と人体力学

呼吸が苦しかったり、胃がもたれたり、体がむくんだりというように、身体の機能がうまく働かない状態が「病気」とすると、それらの病気の原因も人体力学で読み解いていくことができます。

例えば、不妊が呼吸器の弱さを原因としていることは、医学的には疑問符がつくのでしょうが、人体力学的には必ず見なければいけない急所です。

それは、呼吸器を表す肩甲骨と生殖器を表す骨盤が、人体力学的な連動関係を持っているからに他なりません。この場合、呼吸器の働きが高まってくると、骨盤(=卵巣・子宮)の働きが自然に高まるという関係にあります。

単純に説明するとすれば、人体力学的な問題により骨格が圧迫されて、本来の形から歪んでしまうと、中にある内臓の働きも阻害されてしまうということです。

逆にその人体力学的な問題の元をたどって正せば、内臓の問題が改善に向かうということなのです。



■身体の美しさと人体力学

自然の風景は、重力や雨、風などの力を受け、刻々と変化しつつも、自然の法則に従ってその時に「あるべき姿」にあるからこそ、見て安心感があり、また美しさも感じます。

名建築や、道具・機械なども、性能が素晴らしいものは、ほぼ例外なく美しいものです。

わたしたち人間も含め、動物の身体も、本来の働きを持っている状態がもっとも美しいのです。持ち上がったバスト、ヒップ、キュッとくびれたウエスト、足首などは、外から作れるものではなく、人体力学的に統一のとれた状態を映すものなのです。



■人体力学と整体指導

整体指導のすべての技術は、井本整体の「人体力学」に基づいています。

人体力学の法則を大きな柱の一つとして、それぞれの方の身体の個性を読み、原因に働きかけ、自らの力で改善の方向に向かわせる、ということが整体指導です。

整体指導には、その人のためのオーダーメイド体操(人体力学体操・整体体操)の選択、指導も含まれており、人任せではなくご自分の力で身体をつくり育てていくことを目指します。
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